コーギーのベストコンディションとは
第一話
ローマは一日にしてならず、突然こんなことわざを言い出してびっくりされるかと思いますが、この言葉こそコーギーを育てる、しいていうならショードッグのコーギーを育てる上で、いつも頭に置いておいてもらいたいキーワードなのです。
体重についての話ですが、今のスダンダードではオスは13キロ、メスは11キロくらいがベストであるとされています。しかしこの体重だからいいのではありません。そのコーギーの体の大きさや骨量に合った体重が必要とされます。
つまり見ただけでも小さく見えるのに、体重はスタンダードである、こんなコーギーはどうぞ一度真上から愛犬の体を見下ろしてみて下さい。肋骨のすぐ後ろのウエストが洋なしのようにくびれがあることが、わかりますか?
実際に触ってみることも大事です。もしこのくびれがなく胴全体が一本の筒のように感じられましたら、すぐにでもダイエットを初めてあげるこをお勧めします。作業犬であるコーギーに、皮下脂肪は必要ではありません。
必要なのは固くしまった筋肉です。体重の増加はこの筋肉と骨の重さで増えていくものだとオーナーさんは強く自覚しておいてください。肢が短く、作業犬であるコーギーを太らせるとその結果は腰や足に負担を生じさせることを、自覚してほしいと思います。
ただし犬は機械ではありませんので、こう言われたからこうと簡単にはいかないかもしれません。特にコーギーには生まれつき大変食いしん坊な個体が多くみられます。今までお腹一杯に食べていたフードやおやつと急に減らしてしまうなんて、可哀そうだと多くのオーナーさんは感じることでしょう。
第二話
フードやおやつを減らすのは可哀そうと思うオーナーさんは多いことと思いますが、心を鬼にして改善をしてほしいと思います。コーギーには肥満は大敵と述べましたが、もっといいますと肥満を
放置すると背骨に負担がかかり、傷めやすくなり、将来的には肥満からくる心疾患まで誘発しかねません。
このようなことを考えれば、可哀そうだからほしいだけ与えるという考えを改める気にならないでしょうか?そこでまずフードの量を見直しましょう。生後1歳も過ぎましたら、食事は1日1回にしても充分です。
量は適量はやはりその犬の体格で変化がありますので、一概には言えませんが、とりあえず今まで食べていた量の半分にして、その減らした分を他の代替食品で補います。犬は本来肉食ですので、人間ほど炭水化物や野菜類を吸収しない内臓の作りなっています。
それを上手く利用して、たとえば人参、大根ブロッコリーなどを茹で、あとはパスタなどを少しだけ細かく切ってそれを混ぜ合わせて、フードを減らした分量だけ食事に混ぜ与えてあげれば量としての満足感を得られるので、無理なダイエットにはならないと思います。
是非少しの手間をさいて、コーギーたちの食事を工夫してみてあげて下さい。しかし生後1歳未満のパピー達の食事は、今まで述べてきたこととはほぼ真逆なお話をしなければなりません。
第三話
ペンブローク・コーギーの仔犬たちには生後6ヶ月くらいまでは、一日2、3回にわけて十分なフードを与えて下さい。充分なフードとは仔犬がもういらないとフード残すくらいのことです。慣れてくれば残さずに食べきる分量がわかってくると思います。
あとは便の状態がよければ、それが適量であるということです。子犬の時から、食べさせ過ぎを恐れて、量を減らすと胃の成長が未熟となりその個体の持つ本来のサイズが出ない場合があるので、注意が必要です。
私自身よく子犬のオーナーさんに話のですが、生後1歳までの成長過程でしっかりとした骨格構成が培われていきます。この時期に食事の量が少ないと正常な骨量を作り出すことができずに、全体に貧弱な印象のコーギーになりがちです。
これではせっかく素晴らしい血統を持って生まれてきたコーギーなのに残念で仕方ないので、そのことをオーナーさんによく理解してもらうようにしています。簡単に述べますと生後一歳までは肥満をおそれず、パピーたちが食べたいだけ食事を与えてもらえたらと思います。
そうすることで、とりあえず、その個体がもつベストな体型を体現していくことが可能になってくるのです。次に運動です。パピー時代はほしいだけ食べさせるといっても運動をしないでいいわけではありません。
また十分な運動をすることにより、より食欲が増進されるので、適度な運動はパピーにはかかせないことなのです。コーギーにとっての運動とは、本来ウエールズ地方の牧場で、自由に牛を追いかけていた遺伝子を持つ彼らにとってはごく当たり前のように行われるべきものです。
実際、コーギーのパピーたちはほっておけば1日中でも仲間同士でじゃれあってすごしています。ですがどうしても1匹飼いの場合はこの群れでの運動量には勝てないリスクがありますので、そこはオーナーさんの工夫により、おもちゃを使うなりして、充分にパピーたちと遊んでもらいたいと思います。
そしてワクチン接種も終わり、外に出ていけるようなればできるだけ多くの犬の友達を作り、そこで親兄妹たちと遊ぶ代わりとなるくらいの運動が出来ればベストです。
第四話
生後半年を過ぎてくると、そろそろコーギーとしてのスタンダードを意識した運動を心かげる時期です。その頃にはリードにも慣れていると思うので、引き綱運動も取り入れましょう。1歳と過ぎるといよいよ本格的な運動に移行していきます。
そしてここからがコーギー・ペンブロークの仕上げの時期だということを自覚して、規則正しい運動を是非実践してもらいたいと思います。運動の時間としては1日2回、1時間づつくらいの運動ができればベストですが1日一回でも、とにかく毎日続けることが重要です。
話はオーバーですが人間でもアスリートと呼ばれる人たちは、1年365日を通じて運動を取り入れていると思います。それだけ筋肉にとって運動はかかせないものであり1日休めば、その分の筋肉が消えると思ってもらってもいいくらいです。
引き運動の場合はダラダラと歩かせるのではなく、飼い主の左側に犬をつけて、人間は速歩で歩きます。自転車運動ができるようにしつければ人間は随分負担が減ることになるので、チャレンジできる方はやってみて下さい。但し横転などの危険もあるので、くれぐれも無理をせず注意することを忘れずに。
そして利用できるドッグランなどがあれば時々はコーギーを仲間たちと思いきり走らせてあげて下さい。それこそが彼らの本来のDNAを呼びさます運動であり、彼らの一番の楽しみなのだということを考えてあげてほしいと思います。
今までのコーギーと運動のお話は、コーギー・ペンブロークのスタンダートとしての骨格構成を完成たせるためには、絶対に必要なことのひとつですの是非、ドッグショーにチャレンジする、しないにかかわらず実践していってもらいたいと思います。
ブリーダーとして述べるなら、規則正しい運動をさせることに自信のない方は、もう一度犬種の選択を考えてほしいと、願うほどなのです。コーギーのベストな管理には、運動の他にもまだ必要なことがあります。
第五話
コーギー・ペンブロークにおけるベスト・コンディションとは、個体差や年齢によって異なりますが、体重、コート(被毛)、骨格、筋肉、そして性格も含めてトータルでバランスのとれた状態のことです。
生後半年くらいでは、まだまだ成長過程にありますので、この限りではありませんが1歳のコーギーと3歳のコーギーでは全体の犬ぶりにも大分と差があるのが、わかると思います。特に雄犬は成長が雌犬よりも遅いので、1歳時ではまだまだ未完成の状態です。
雄のコーギーは3歳にもなるとコートの状態はよりすばらしくなり、骨格も1歳の頃に比べると横に張ったような、どっしりとした印象に変化していきます。逆に言うと、1歳の頃と3歳時において、めだった変化が感じられなかったとします。
その理由は、やはり日ごろの運動や栄養状態になんらかの影響があるかもしれませんのでその点をコーギーたちのためにももう一度見直してあげてほしいと思います。日頃の管理がとても上手くいき、そのコーギーの血統や持って生まれた資質がすばらしければ、ドッグショーにエントリーさせる目標も見えてきます。
しかしドッグショーにエントリーするということは、オーナーさんと愛犬にとってベスト・コンディションなコーギーに仕上げる=育てる、という意味でかなりの努力が必要なのだということを覚えておいて下さい。
また余談ですが、いくら日常の管理を完璧にこなしたとしても、絶対にドッグショーにはエントリーできない個体があります。それは先天的な問題であり、いわゆるフラッフィーと呼ばれる生まれつきにコートが長めのコーギーです。
他には体に現れるホワイトのマーキングが多すぎるもの、それは白が目の上にかぶさって現れたり、背中やお腹の部分に現れたりした場合はミスカラーといって、これらはスタンダードからは外れてしまう個体ですので、残念ながらドッグショーエントリーは不可能となってしまいます。
しかしこれらのコーギーでも日常の生活には何の問題もありませんので、ドッグショーには出られませんが、家庭犬として立派なコーギーに育ててもらえればと思います。ちょっと脱線しましたが、コーギーのベスト・コンディションのお話は続きます。
第六話
コーギーは短毛種ですが、だからといってブラッシングをおろそかにしてはいけません。毎日のブラッシングは皮膚の状態をよくし、抜け毛を少しでも多く取り去ってやることで皮膚の新陳代謝が促されて、つやのあるきれいなコートを維持することができます。
その上に、バランスの良い食事を与えることにより、さらにコートの状態はよくなると思います。やはりコートを見ただけで、食生活のよしあしまで判断ができますのでコート管理はしっかりと、オーナーさんにしてもらいたいことのひとつです。
また、だいたいコーギーは1年に2回ほど季節の変わり目に大量のアンダーコート(下毛)が抜け落ち、その多さにびっくりされるかもしれませんが、これも大変ですがシャンプーなども取り入れて、この時期は特に念入りにコートのお手入れをして下さい。
ついめんどくさくなり、そのまま放置していると下毛が体に付いたまま少しの水分でも蒸れて、それが原因で皮膚疾患にまで至ることがあるので、注意が必要です。
第七話
ペンブリーク・コーギーに必要な、しっかりとした骨格を作るにはどうしたらよいのでしょうか。ベビーの頃から適度な運動と、日光浴を行い、順調に成長しているコーギーたちにとっては、それ以上何かする必要はありません。
よく市販されているサプリメント類は、その効き目ということに関してあくまで主観の問題ですので、あげたから即結果でるというものではないとくことは、頭に置いて使う方がいいでしょう。カルシウム関係のサプリを利用する方が多いようですが、これも与えすぎは帰って骨に悪影響を与えますので注意が必要です。
ここでブリーダーとして述べたいことは現在のコーギー・ペンブロークを造りだした何十年のブリーダーの努力というものを、正しく理解してもらいたいということです。つまり、血統書さえコーギーであれば、そして正しい管理さえしていれば、誰の目から見ても立派なコーギーに成長するのかという問題です。
答えは同然ノーです。ではどうすればいいのか。それにはまず血統書を正しく理解することです。そしてそれがもし優れたコーギーの血統書であったとしたら、今度はその血統書を有する本犬そのものが、血統書に負けないくらいのすばらしさを、体現できているかを確認して下さい。
それもまたOKということなら、そしてそんな両親犬を持って生まれてきた仔犬なら、そこから今まで述べてきた日常の管理が本当の意味で生きてくるということなのです。管理のお話からは少々脱線してしまいましたが、それに関連するブリーディングの話に続きます。
第八話
すばらしいコーギーとは、静止した姿だけで判断するものではありません。今までにも何度も述べてきたように、彼らは作業犬としてのルーツを持つ以上正しい骨格構成と歩様ができなければ、仕事の効率をあげることは難しくなります。
現在でもスタンダードの審査の場としてのドッグショーでは、コーギーにおける歩様のポイントは高く審査される項目です。正しい歩様は正しい骨格構成から生みだされます。しかしこれは後天的努力によって得られるものではなく、先天的な血統の流れとしての個体が、どうであるかにかかっています。
見た目は確かにすばらしいペンブローク・コーギーがいたとしましょう。しかし実際にそのコーギーにショーリードをつけて歩かせてみたところ肢を引きずる、うまく地面を蹴って歩くことができない状況であったとします。
もしそうなら、それは管理だけではカバーしきれない欠点であり、どこかに血統的な問題がひそんでいるということを認識するべきではないでしょうか。骨格、筋肉というものは普段の栄養不足や運動不足から崩れてしまいがちです。
しかしそれらを有する器そのものに先天的、血統的な欠点を持つ個体である場合、今まで述べてきたような日常的な管理もオーバーにいうと、すべて無駄になってしまうかもしれないのです。無知なブリーディグから生まれた不健全に成長したコーギーはやはり現在も多数存在しているというのが、現実です。
そしてそういう個体に出会うと、飼い主さんにそんなことを言うつもりはありませんが、心の中は本当に悲しい気持ちで一杯になってしまいます。それは間違いなくオーナーの責任ではなく、私たちブリーダーの責任なのです。そのことを肝に銘じて、ブリーディングというものはなさねばならないものだと思います。
第九話
最後になりますが、コーギーのキャラクターについてお話しします。ドッグショーは各犬種がどのくらいスタンダードに適合しているかを比較審査する場所です。そのスタンダードの中には、キャラクターについての項目も含まれています。
つまり一般的なコーギーの性格を審査されるわけですが、それは凶暴、あるいは極度にしゃいなペンブローク・コーギーに対しては審査員は退場を命じることができると記されています。すなわちこの逆の性格ならよいというわけなのです。
しかしなかにな凶暴でもしゃいでもないが、おとなしすぎて生き生きとした表情と表せない個体もいます。覚えておいてほしいのは、この生き生きとした仕草こそがペンブローク・コーギーに問われるもっとも重要なことなのです。
考えてみて下さい、彼らが本来の牧畜犬としての仕事をしていた頃、その仕事に対してつまらなそうだったりやる気のなさをみせていた犬がいたでしょうか。人間的に表現すると仕事をしている時の彼らはまさまに情熱のかたまり、この世にこんな楽しいことはないとばかりに全力で走り回っていたはずです。
そしてその時の表情こそがドッグショーにおいても、ペンブローク・コーギーにもとめられることなのです。正しいDNAを持ったペンブローク・コーギーならばきっと飼い主が真剣に彼らと向き合い、彼らと一緒に行動する時、コーギーならきっとそれに応えてくれます。
ドッグショーにおけるペンブローク・コーギーの気質、キャラクターというものはまさにこういったものであると理解して頂けましたか。資質のあるコーギーがもし手元にいたとして、しかしそれだけではドッグショーで良い成績を収められると決まっているわけではありません。
しかし活発な気質の多いペンブリーク・コーギーのトレーニングすることは、そんなに難しいことではありません。ドッグショーにおいては審査のわずかな時間の集中力さえやしなうことができれば、きっと楽しく参加することができるでしょう。
まとめの話になりますが、ドッグショーを見学すると、同じ犬種なのに自分のコーギーとの違いに驚く人が少なくないようです。単にショータイプ、ペットタイプと分けてしまって、ドッグショーに出したいならショータイプを買えばいい、とそう思われるかもしれません。
しかし犬を飼っただけでは、宝の持ち腐れになってしまいます。ドッグショーにコーギーを出そうとするなら、日ごろからの手入れや運動を欠かすことはできません。また質の良い食事にも気を配り、そうしたトータルバランスのとれた日常をこなすことにより、初めて煌びやかなショーのリングに立つ日が来るのだと、覚えておいてください。
そしてドッグショーに出陳できるレベルの体を作るとことが出来たら今度はショーマナーをコーギーに覚えさせることも大切なことです。普段から体のどの部分を触られても嫌がったりしないように、グルーミングもその目的の為に、念入りにやります。
また知らない人や場所にも慣らさないといけません。それから実際にショーリードをつけてハンドラーの指示通りにステイや脚側歩行などをするショーマナーを練習していきます。機会があればショー会場に足を運び会場の雰囲気に触れさせて、コーギーに会場の雰囲気に慣らせることも重要です。
私の飼っているショータイプのコーギーは、それは見た目は立派な黙っていればチャンピオン犬で通る犬でしたが、そんな感じなのでとりあえずショーに出しさえすれば、評価はしてもらえると思っていたのが間違いでした。
実際審査が始まると実に落ち着きがなくなりジャッジが触れると興奮して飛びつこうとしたりして、本当に目を覆いたくなる結果となってしまいました。今彼は、本当のショードッグになるために一から勉強を始めているところです。
第十話 コーギーとドッグショー その意義について
FCI公認犬種は300を越えますが、各犬種には、その犬種の歴史や用途などから導き出された理想像「犬種標準(スタンダード)」が定められていま す。ブリーダーは、この理想像に少しでも近い犬を作りだすために研究、繁殖を繰り返すのです。
ドッグショーは、繁殖者が作り出した犬を、評価・表彰することにより、純粋 犬種の優れた血統を後世に引き継ぎ、繁殖の指針とするために行われるもので純粋犬種の保護・育成・発展を目的とします。つまり、純粋犬種の普及や文化の継承という役割を担っているのです。
私もブリーダーとして自分が繁殖したコーギーが、他の犬舎のコーギーたちと並んで、どのような評価を受けるかがやはり一番の関心事には違いありません。しかし、たとえその審査に落ちたとしても、それで落胆していてはだめなのです。
その日出陳されていたコーギーと自分の犬舎のコーギーの違いを考え、それを次回の繁殖に生かすことこそ大事なことだと思っています。まずはドッグショーに出陳すること。そして高い資質を持つコーギーたちと切磋琢磨することが、さらに高いレベルの繁殖につながるのだと思います。